この事例の依頼主
40代 男性
相談前の状況
産後鬱の状態がひどい妻のサポートに尽力するも、自身の精神的落込みも激しかった夫。子供もいることから離婚は言い出しませんでしたが、子供が高校生になった頃、職場で知り合った女性と交際を開始、今の婚姻生活に意味がないと考え離婚を考えるように。交際相手とはすぐに別れたものの、別居し妻に対し離婚を提案。しかし、妻は不貞の事実を知っており、離婚を拒絶。妻は自宅の住宅ローン6万を含む月額20万の婚姻費用の請求をし、相談者は支払いに応じていました。
解決への流れ
妻が不貞を知っていたこともあり、言われるがまま20万円の婚姻費用を支払っていた相談者。しかしこれは家庭裁判所で用いられている婚姻費用の算定表(婚姻費用・子1人表)に照らすと相当高額であると考えられました。まず、適正な婚姻費用の支払の見地から月額12万5000円とする旨通知し、実行。妻から婚姻費用の調停が申し立てられるも、両者の年収で算定表に照らし算出すると、相談者が負担すべき婚姻費用相当額は月額8万円~10万円でした。住宅ローンについては、相談者の財産である自宅のローン返済という面から,6万円全額を住居費として婚姻費用から控除することはできませんでしたが、妻が居住の利益を得る一方、婚姻費用とは別にローン返済をそのまま継続をするのも不合理です。そこで、権利者である妻の総収入に対応する標準的な住居関係費を婚姻費用から控除するという考えを主張し、最終的に、お子さんの養育にかかる費用も考慮して相談者がローンの支払いを継続するとともに婚姻費用として月額7万円を支払うとの内容で合意をしました。
相談者側に原因がある場合、相手方が離婚に合意せず、離婚するまでに相当の期間がかかることがあります。そのような場合に大きな負担となるのが婚姻費用です。自分に非があると考える相談者は、相手方の請求する金額についてはなるべく払おうと考える方が多いですが、それを継続するのも困難かと思います。私自身は、家庭裁判所で認められている算定表は、特にお子さんがいるケースでは少し安すぎるのではないかとの感想を抱いていますが、実際のところ算定表の範囲内で支払いをしていれば第三者から非難を受けることはありません。相手方から多くの婚姻費用の請求をされることもありますが、合理的な範囲を超える要求である場合には、適正な金額まで減額したうえで、腰を落ち着けて相手方と離婚交渉をしてはいかがでしょうか。このケースでは、住宅ローンと住居費の婚姻費用からの控除といった論点がありましたが、最終的に、双方が納得できる合意をすることができました。