この事例の依頼主
女性
相談前の状況
入社して3年経ったころ、異動先で業務上のミスを犯してしまったことに対して、同僚の前で、上司から「無能」、「小学生以下」などの言葉を受けた。以後、些細なミスを取り上げてはなじるようになった。また、会議室に呼び出され、1時間以上同じ出来事に対して繰り返し執ように叱られた。その上司による指導が始まって6か月で体調不良を起こし、休職を開始した。精神科を受診したところ、うつ病と診断された。半年の休職期間を満了後、職場復帰も叶わず、退職することとなった。当該上司及び相手方企業を相手に損害賠償請求をしたい。
解決への流れ
相談された上司による上記各言動はいずれも、優越的な地位にある者からの必要かつ相当な範囲を超えた業務指導であり、これにより労働者は著しい精神的苦痛を被っているから、違法なパワー・ハラスメントに該当することは明らかと判断。しかし、上司の発言に関する録音データがなく、労働者が付けている手帳などが主な証拠であった。労働審判を申し立て、3回ほど期日を行ったところ、相手方は、解決金として100万円を支払うことに合意した。
パワー・ハラスメントは直接証拠がないこともあり、立証に困難を要する場合が多い。相談者は普段から手帳にその日にあった出来事を記していたり、体調を崩して休職していたころから当職に相談いただいていたため、事実関係に関する記憶をできるだけ保持したままで争いに望むことができた。慰謝料金額については、労働者の職場復帰が必ずしも見えていない当時では満足できる金額ではなかったが、早期解決の観点から納得の上での解決となった。