この事例の依頼主
30代 男性
相談前の状況
相談者様が自転車で走行中、貨物自動車に追突されて転倒。腰椎破裂骨折、胸腰椎多発骨折、血気胸、肝臓・脾臓損傷、馬尾神経切断等の重篤な怪我を負いました。既に通院は終了しており、後遺障害の等級認定(事前認定)がでた後に、当事務所にご相談なされ、ご依頼となりました。
解決への流れ
症状聴き取り、医療記録等の精査を徹底して行い、せき柱の変形障害、胸腰部の運動障害等多くの点で異議申立てを行いました。異議申立てが通らなかった部分もありましたが、「ひ臓を失ったもの」と新たに判断され、13級11号の後遺障害として認定されました。〈保険会社との示談交渉〉争いになった主な点は、労働能力の喪失を導く程の後遺障害といえるかです。当事務所は、併合6級を全面に打ち出して金額を提示しました。しかし、相手損保会社は、自賠責保険審査会の判断に従わず、7級4号を前提として賠償額を算定してきのです。その理由とするところは、「胆のう摘出による労働能力の喪失は考えにくい」という点でした。確かに、胆のう摘出がどの程度稼働能力に影響を及ぼすのかという点は無視することはできません。しかし、それはさておいても、脾臓については、判例上逸失利益はだいたい肯定されています。したがって、7級を前提に逸失利益を算定すること固執するのはおかしなことです。このような主張を展開しましたが、相手損保会社は、頑として譲らず、その理由についても明確に述べるところがありませんでした。
胆のう摘出だけが後遺障害として認定されていたとしたら、相手損保会社が主張するように、逸失利益を算定する際には、それは除いて考えるべき(つまり、7級とみる)との言い分にはなかなか反論しづらいものがありました。しかし、外傷も大きかったですが、臓器に損傷がある事案と考えられたので、さまざまな観点から異議申立てを行いました。「ひ臓を失ったもの」と新たに判断されたことで、労働能力には影響があると、胆のうだけのときに比べて強く主張する途が開けたわけです。異議申立てをするかどうか、どのような観点に着目して異議申立てをするかが、その後の賠償金額の大きな影響を及ぼしたと言えます。後遺障害の等級認定は交通事故損害賠償の大きな要であることが改めて認識させられた事案です。