部員による暴力事案が発覚し、波紋を広げる広陵高校が8月7日、甲子園の初戦を迎えた。
SNS上では、真偽不明のまま選手の写真や名前が加害者であるかのように投稿されたり、「甲子園を汚すな」「潔く辞退しろ」といった厳しいコメントが相次いでいる。
こうした状況について、スポーツ法務にくわしい高橋駿弁護士は「行き過ぎた"ネットリンチ"に発展していないか」として、冷静な対応を呼びかけている。(弁護士ドットコムニュース・玉村勇樹)
●「事実なら非難されて当然」でも冷静な対応を
高橋弁護士は「発覚した事案が重大な問題であることに議論の余地はなく、非難されてしかるべきだ」と前置きしつつ、次のように慎重な姿勢を示した。
「本件に限らず、SNSなどで拡散される情報の真偽を見極めるのは非常に難しい時代です。客観的な事実関係を正確に把握できていない段階で、SNSを含む公の場で断定的な発言をすることには、十分注意が必要です」
そのうえで、明らかに一線を越えた投稿に対しては、次のように指摘する。
「高野連や学校の対応について批判的な意見を述べること自体は自由であり、それが直ちに誹謗中傷になるわけではありません。ただ、『いじめは許されない』とうったえながら、自分自身がSNS上で"ネットリンチ"という新たな『いじめ』の当事者になっていないか。他人の権利を侵害するような投稿をしていないか。一度立ち止まって冷静に考えていただきたいと思います」
●法的責任を問われる可能性も
高野連も、SNS上の誹謗中傷に対して注意を呼びかけている。高橋弁護士も「現在、単なる批判や意見の範疇を明らかに超える投稿も散見される」と警鐘を鳴らす。
「こうした投稿には、侮辱や名誉毀損、プライバシー侵害など、民事・刑事の両面で法的責任が問われる可能性があります。関係者に対する怒りや批判の気持ちは理解できますが、その感情のまま自らが"加害者"とならないよう、冷静な行動を心がけてほしいと思います」
●広陵高校が事案の詳細を公表「極めて遺憾」と再発防止を表明
広陵高校は8月6日、硬式野球部で発生した暴力事案の詳細を公表した。
発表によると、今年1月、当時2年生だった部員4人が、当時1年生の部員1人に対して、暴力を伴う不適切な行為を行っていたと認めたという。
この件について、学校は同年3月、日本高野連から「厳重注意」の処分を受けていたことも明らかにした。該当する部員には、発覚から1カ月以内の公式戦への出場を認めない指導をおこなったという。
学校側は今回の事案について「極めて遺憾」と表明し、「全校を挙げて再発防止に注力してまいります」とコメント。また、インターネット上では「調査結果とは異なる情報や憶測に基づく投稿、関係のない生徒への誹謗中傷も見受けられる」とし、「生徒たちが能力を発揮し、夢や目標に向かって成長できるよう支えていく所存」と、関係者に冷静な対応を求めた。