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ハローワークの「求人票」より給料が少なかったら、差額を請求できるか?
2013年08月10日 12時05分

ハローワークの求人票に記載された内容と実際の労働条件が違う」。NHKによると、全国のハローワークに寄せられたこのような苦情が昨年度、少なくとも6600件以上にのぼったという。

苦情の中身は、求人票に書いてある額より大幅に賃金が低かったり、社会保険に加入できなかったというケースが目立ったという。また、正社員として募集しながら、実はアルバイト契約だったというケースもあったそうだ。

もし求人票に表示された賃金よりも、実際に支払われる給料が少ない場合、労働者はその差額を支払うよう求めることはできるのだろうか。労働問題にくわしい山田長正弁護士に聞いた。

●賃金の額は、ハローワークの求人票ではなく「雇用契約」で決まる

「ハローワークに求人を出す場合、企業には、労働条件を明示することが義務づけられています。そのため、労働者は、ハローワークの求人票に記載された賃金額を得られると考えがちです」

――求人票に記載された賃金額をもらえるとは限らないのか?

「賃金額は、労働者と企業との間の『雇用契約』にもとづいて決まります。この点、企業がハローワークを通じて労働者の募集を行い、労働者がこれに応募しただけでは、まだ雇用契約は成立していません。

労働者は、求人票に記載されている賃金を当然に請求できるわけではないのです。もし求人票記載の賃金額と異なる雇用契約を締結したのであれば、雇用契約にもとづく賃金額が優先します。したがって、差額請求を行うことは容易ではありません」

――そうすると、労働者はあきらめるしかない?

「いいえ、そうとも言い切れません。企業として、合理的な理由なく、求人票記載の賃金額を引き下げて労働者に提示し、その内容で雇用契約が成立した場合、企業に信義則違反があったとして、慰謝料支払義務を負う場合がありえます」

――企業はどう対応するのが望ましいのか?

「企業は、安易に求人票記載の賃金額を下げるべきではありません。また、賃金額を引き下げる場合でも、求人票記載の賃金額を下げる必要性が高いことを労働者に説明すべきです。そのうえで、労働者が変更を了解した旨の書面を取り付ける等の手段を講じることで、労働者との間でトラブルが起きるリスクを下げるべきです」

(弁護士ドットコムニュース)

ハローワークの求人票に記載された内容と実際の労働条件が違う」。NHKによると、全国のハローワークに寄せられたこのような苦情が昨年度、少なくとも6600件以上にのぼったという。

苦情の中身は、求人票に書いてある額より大幅に賃金が低かったり、社会保険に加入できなかったというケースが目立ったという。また、正社員として募集しながら、実はアルバイト契約だったというケースもあったそうだ。

もし求人票に表示された賃金よりも、実際に支払われる給料が少ない場合、労働者はその差額を支払うよう求めることはできるのだろうか。労働問題にくわしい山田長正弁護士に聞いた。

●賃金の額は、ハローワークの求人票ではなく「雇用契約」で決まる

「ハローワークに求人を出す場合、企業には、労働条件を明示することが義務づけられています。そのため、労働者は、ハローワークの求人票に記載された賃金額を得られると考えがちです」

――求人票に記載された賃金額をもらえるとは限らないのか?

「賃金額は、労働者と企業との間の『雇用契約』にもとづいて決まります。この点、企業がハローワークを通じて労働者の募集を行い、労働者がこれに応募しただけでは、まだ雇用契約は成立していません。

労働者は、求人票に記載されている賃金を当然に請求できるわけではないのです。もし求人票記載の賃金額と異なる雇用契約を締結したのであれば、雇用契約にもとづく賃金額が優先します。したがって、差額請求を行うことは容易ではありません」

――そうすると、労働者はあきらめるしかない?

「いいえ、そうとも言い切れません。企業として、合理的な理由なく、求人票記載の賃金額を引き下げて労働者に提示し、その内容で雇用契約が成立した場合、企業に信義則違反があったとして、慰謝料支払義務を負う場合がありえます」

――企業はどう対応するのが望ましいのか?

「企業は、安易に求人票記載の賃金額を下げるべきではありません。また、賃金額を引き下げる場合でも、求人票記載の賃金額を下げる必要性が高いことを労働者に説明すべきです。そのうえで、労働者が変更を了解した旨の書面を取り付ける等の手段を講じることで、労働者との間でトラブルが起きるリスクを下げるべきです」

(弁護士ドットコムニュース)

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