11917.jpg
「偽ナイキ」販売で衣料品店主を逮捕・・・ブランドの「コピー品」売買は犯罪なのか?
2015年10月30日 15時03分

東京・渋谷の衣料品店で、人気ブランド「ナイキ」の偽物スニーカーを販売していたとして、店の経営者でナイジェリア国籍の男性ら3人が商標法違反の疑いで、警視庁に逮捕された。3人はいずれも容疑を否認し、「スニーカーは売り物ではなかった」と話しているという。

報道によると、逮捕された3人は10月20日、渋谷センター街にある2つの衣料品店で、「ナイキ」のロゴが入った偽物のスニーカー3足を販売目的で所持していた疑いがもたれている。それぞれの店では、偽物のスニーカーが3万円前後で売られていたという。同署は店から50足以上のスニーカーを押収し、偽物かどうかの鑑定や、入手ルートを調べているという。

今回のニュースでは、逮捕された男性らは商標法違反の疑いがあるということだが、偽物を販売することには、法的にどのような問題があるのだろうか。冨宅 恵弁護士に聞いた。

東京・渋谷の衣料品店で、人気ブランド「ナイキ」の偽物スニーカーを販売していたとして、店の経営者でナイジェリア国籍の男性ら3人が商標法違反の疑いで、警視庁に逮捕された。3人はいずれも容疑を否認し、「スニーカーは売り物ではなかった」と話しているという。

報道によると、逮捕された3人は10月20日、渋谷センター街にある2つの衣料品店で、「ナイキ」のロゴが入った偽物のスニーカー3足を販売目的で所持していた疑いがもたれている。それぞれの店では、偽物のスニーカーが3万円前後で売られていたという。同署は店から50足以上のスニーカーを押収し、偽物かどうかの鑑定や、入手ルートを調べているという。

今回のニュースでは、逮捕された男性らは商標法違反の疑いがあるということだが、偽物を販売することには、法的にどのような問題があるのだろうか。冨宅 恵弁護士に聞いた。

●ナイキのロゴは「商標」

「商標や特許発明、著作物など、人間の知恵から生まれた財産を知的財産といいます。たとえば、今回のニュースに出てくるナイキのロゴは、商標として登録されているものです。

ある人が生み出した知的財産を、許可なく使用した場合には、商品の廃棄を含む使用差止や損害賠償といった民事上の問題だけではなく、刑事罰を科される可能性があります」

冨宅弁護士はこのように説明する。

「商品の廃棄を含む使用差止については、過失の有無を問わず、他人の知的財産権を侵害しているだけで認められます。一方、損害賠償が認められるためには、侵害を行ったことについて、故意または過失があったことを権利者が立証しなくてはなりません。

しかし、特許権や商標権などのように登録制度が存在する知的財産権については、法律によって過失が推定されているので、権利者が侵害者の故意・過失を立証する必要がありません。登録制度の存在しない著作権などについても、過失が否定されることは少ないです。

そのため、他人の知的財産権を侵害している場合には、たとえ知らずに侵害していた場合でも、商品の廃棄を含む使用差止めや損害賠償が認められる可能性があります」

●「故意に」知的財産を侵害したら、刑事罰を科される

刑事罰については、どのような場合に科されるのだろうか。

「他方、知的財産権を侵害したことによって刑事罰を加えるためには、他人の知的財産権を侵害していることについて故意が必要になります。

ですから、他人の知的財産権を侵害しているという理由で警察が捜査を開始したり、逮捕に踏み切る場合というのは、さまざまな状況を総合的に判断して、他人の知的財産権を故意に侵害していると評価できる場合に限られます」

今回の事件については、どのように考えられるのだろうか。

「今回のケースでは、高額で取引されているスニーカーの偽物が存在したこと、容疑者はスポーツ用品を取り扱う業務に従事しており、本物と偽物の区別ができると考えられることから、容疑者に『故意』が認められると判断して、強制捜査に踏み切ったのだと思われます。

容疑者は、売り物ではなかったと主張しているようですね。しかし、所持していたのがスポーツ用品の販売業者であることに加えて、店舗に陳列していた事実も存在するようですので、『自身で使用するために購入した』すなわち『販売目的で購入したのではない』という主張は認められないでしょう」

●ネットで売られる「コピー品」の購入者も罪に問われる?

ネット上には、ブランドの時計やバッグの偽物を、「コピー品」と称して安価で販売するサイトも見られる。こうした「コピー品」を、偽物と分かった上で購入した側も、罪に問われるのか?

「使用差止や損害賠償といった民事上の責任については、購入者についても問題になります。一方、刑事上の責任は販売する側だけの問題です。たとえ他人の知的財産権を侵害していると理解した上で商品を購入した場合でも、自身で使用するために購入したのであれば、刑事上の責任を追及されることはありません。

ですから、ネット上でコピー商品であることを知って購入したとしても、警察の捜査を受けたり、逮捕されるということはありません。

ただし、販売者側に科される刑事罰は比較的重く、侵害行為を行った者については、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、あるいは両方の刑が科されることがあります」

冨宅弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る