11936.jpg
袴田事件、最高裁判事2人が「再審開始すべき」 知っておきたい「検察官の不服申立て」問題
2020年12月24日 10時02分

静岡県で一家4人が殺害された1966年の「袴田事件」で死刑が確定した袴田巌さん(84)について、最高裁第三小法廷(林道晴裁判長)は、裁判のやり直しを認めなかった東京高裁決定を取り消し、高裁に審理を差し戻した。12月22日付。

事件が起きたのはビートルズ来日の真っ只中。以来、袴田さんはおよそ半世紀にわたって自由を奪われ、2014年3月、静岡地裁で再審開始決定とともにようやく釈放された。

しかし、2018年6月、東京高裁は地裁決定を取り消し、再審を認めない決定を出していた。なお、釈放自体は継続している。

静岡県で一家4人が殺害された1966年の「袴田事件」で死刑が確定した袴田巌さん(84)について、最高裁第三小法廷(林道晴裁判長)は、裁判のやり直しを認めなかった東京高裁決定を取り消し、高裁に審理を差し戻した。12月22日付。

事件が起きたのはビートルズ来日の真っ只中。以来、袴田さんはおよそ半世紀にわたって自由を奪われ、2014年3月、静岡地裁で再審開始決定とともにようやく釈放された。

しかし、2018年6月、東京高裁は地裁決定を取り消し、再審を認めない決定を出していた。なお、釈放自体は継続している。

●裁判官2人は“破棄自判”すべき

今回の最高裁決定は、高裁決定を取り消すという点では全員一致。さらに林景一裁判官と宇賀克也裁判官は、そこにとどまらず、最高裁自ら再審開始を認める決定を出すべきとの反対意見を述べている。

その理由は「時間」にあると考えられる。今回の差し戻しの決定により、再審の可否は改めて東京高裁で審理される。だが、そこで再審を認める決定が出たとしても、検察側が不服を申し立てれば(特別抗告)、改めて最高裁で判断されることになる。

そうなれば、仮に再審が始まるとしても、それまでに年単位の時間を覚悟しなくてはならない。

●検察官の抗告を禁止にすべき

おなじく裁判のやり直しを求めている大崎事件では、地裁・高裁が再審開始を認めたのに、最高裁が2019年、決定を取り消し、再審請求を棄却したことがあった。同事件では、このほかにもう1回、再審開始を認めた決定が、検察の不服申し立てによって覆っている。

再審請求人の原口アヤ子さんは現在93歳。同事件の弁護団事務局長の鴨志田祐美弁護士は、再審開始決定に対する、検察側の不服申し立てを禁止すべきだと主張している。

鴨志田弁護士

「再審請求審は、『再審を開くかどうかを決めるだけの前裁きの場』なのです。検察官が有罪を主張したいのであれば、公開の法廷で、被告人への権利保障も手厚い再審公判で堂々とやればよいのです。

本来前審的な軽めの手続きが想定されていたからこそ非公開で手続き規定も少ない再審請求の決定に対して、検察官がいたずらに抗告を繰り返すのは、無辜の救済を目的とした再審制度における検察官の在り方としても問題です」

ドイツでは半世紀以上前の1964年に、再審開始決定に対する検察官抗告を立法で禁止しているという。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る