12485.jpg
国税庁「タワマン節税」監視強化へーー相続税が「追徴課税」されるのはどんなとき?
2015年11月22日 09時35分

富裕層の間でいま、タワーマンションの上層階を購入する「相続税対策」が注目を集めている。そんななか国税庁が、タワーマンションを使った相続税対策への監視を強化するよう、全国の国税局に指示していたと、日本経済新聞が報じた。今後、追徴課税されるケースが出てくる可能性があるという。

この「タワマン節税」とは、どのような仕組みなのだろうか また、住むために購入した場合でも、相続税対策と疑われることがあるのだろうか。久乗 哲税理士に聞いた。

富裕層の間でいま、タワーマンションの上層階を購入する「相続税対策」が注目を集めている。そんななか国税庁が、タワーマンションを使った相続税対策への監視を強化するよう、全国の国税局に指示していたと、日本経済新聞が報じた。今後、追徴課税されるケースが出てくる可能性があるという。

この「タワマン節税」とは、どのような仕組みなのだろうか また、住むために購入した場合でも、相続税対策と疑われることがあるのだろうか。久乗 哲税理士に聞いた。

●「タワマン」で相続税対策はなぜできた?

久乗税理士は、タワマン節税の仕組みを次のように解説する。

「相続税は、相続時の財産の『時価』を基に計算されますが、このとき、計算の基準に用いられるのが、国税庁が税務署に通達している『財産評価基本通達』です。

タワーマンションの場合、土地については共有財産であり、持ち分が圧倒的に小さいのが特徴です。そして、建物については固定資産税の評価額になるため、この通達に基づいて評価すると、相続税の対象となる時価はかなり小さくなります。

また同じ広さならば、評価額は高層でも低層でも変わらないため、市場価格の高い高層階の物件を購入することもあります。タワーマンションは人気があるため、売却した場合には、相続税の評価額よりも高額で売却することができたりするのです。

タワマン節税は、この価額の差を利用した節税策になります」

そして、久乗税理士は「タワマン節税が注目され出した背景には、相続税の課税が強化されたことがあります」と指摘する。

「本来であれば、納税者が財産評価基本通達にしたがって評価をした場合、大きな問題になることはありません。

しかし、財産評価基本通達で評価することが著しく課税の公平を阻害するような場合、国税庁は財産評価基本通達の評価を離れて評価することができることになっています。これが財産評価基本通達の総則6項といわれるものです。

タワマン節税は、この財産評価基本通達総則6項によって、課税されることとなります。

しかし、この総則6項はあくまでも『通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる』場合に使われます。

そのため、タワーマンションを購入して、相続の発生後にすぐ売却するなど、相続財産の評価を下げるためだけに購入したと見なされるような場合に課税される可能性が高くなるでしょう。

したがって、一般的に住むために購入したと認められるような場合には、総則6項によって評価されることはありません」

久乗税理士はこのように話していた。

【取材協力税理士】

久乗 哲 (くのり・さとし)税理士

税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に『新版検証納税者勝訴の判決』(共著)等がある。

事務所名 :税理士法人りたっくす

事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る