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原告側「夫は仕事、妻は家庭」の肯定だと批判…遺族年金の男女差、最高裁が合憲判断
2017年03月22日 09時55分

妻が受け取る場合は年齢不問、夫が受け取る場合は55歳以上ーー。地方公務員の遺族補償年金をめぐる男女の受給要件の違いについて、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は3月21日、法の下の平等を定めた憲法には違反せず、合憲と初めて判断した。男女差別ではないということだ。

大きな理由は、賃金の違い。最高裁が支持した高裁判決では、「(妻は)独力で生計を維持することが困難」などとして、男女差をつけた規定に合理的理由があるとしている。

しかし、今回違憲性が争われた「地方公務員災害補償法」が施行されたのは、半世紀も前の1967年。原告側は、現代では男性も生計を立てづらくなっているなどとして、「性別ではなく、所得要件などで区別すべき」「『夫は仕事、妻は家庭』という性的な役割分担を固定化してしまう」と判決を批判した。

妻が受け取る場合は年齢不問、夫が受け取る場合は55歳以上ーー。地方公務員の遺族補償年金をめぐる男女の受給要件の違いについて、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は3月21日、法の下の平等を定めた憲法には違反せず、合憲と初めて判断した。男女差別ではないということだ。

大きな理由は、賃金の違い。最高裁が支持した高裁判決では、「(妻は)独力で生計を維持することが困難」などとして、男女差をつけた規定に合理的理由があるとしている。

しかし、今回違憲性が争われた「地方公務員災害補償法」が施行されたのは、半世紀も前の1967年。原告側は、現代では男性も生計を立てづらくなっているなどとして、「性別ではなく、所得要件などで区別すべき」「『夫は仕事、妻は家庭』という性的な役割分担を固定化してしまう」と判決を批判した。

●結果は分かっていたが…それでも残念

原告の男性(70)は、元会社員。1998年に中学校教員だった妻を過労自殺で亡くしている。当初は公務災害と認定されなかったが、2010年に大阪地裁で公務災害と認められた。

そこで遺族補償を請求したが、一時金は支払われたものの、妻の死亡時に男性が51歳だったため年金の支給は拒否されてしまった。男性は、この規定が男女差別に当たるとして、2011年10月、大阪地裁に提訴した。

一審は、男性の主張通り違憲としたが、二審は合憲とした。最高裁では、二審判決を変えるために必要な弁論が開かれなかったため、結果はあらかじめ分かっていた。それでも男性は、判決理由や一部裁判官の反対意見に期待していたという。しかし、判決文は2ページと簡潔で、5人の裁判官全員一致の意見だった。

●生活実態ではなく、性別で一律に判断しても良いのか

原告の男性は、共働きだったため、遺族年金が支給されなかったからといって、経済的困難に陥ったわけではないという。それでも違憲性を争ったのは、生活実態ではなく、性別で判断する手法に疑問を持ったからだ。

夫の方が低収入だったらどうなのか。専業主夫だったら。低賃金、非正規雇用、失業は女性だけでなく、男性でも深刻な問題になっている。男女の平均収入を比較し、夫にだけ一律の受給要件を設けるのは、時代に即していないのではないかーー。

男性は、法律制定時とは、夫婦観が大きく変わっていると指摘する。厚労省の統計によると、1980年代には1100万世帯あった専業主婦世帯は2015年には690万世帯に減少。逆に共働き世帯は610万世帯から1200万世帯に増加しており、両者の関係は逆転している。

こうした環境の変化を背景に、法律も少しずつ変化している。たとえば、親を亡くした子どもに対する遺族基礎年金。かつて、遺族基礎年金は母子家庭、ないしは両親のいない子どもにしか支給されなかった。それが2014年から、父子家庭にも支給されるようになった。

しかし、今回の地方公務員の遺族年金のほか、民間向けの労災保険法、国家公務員災害補償法などでは夫側に受給要件が設けられたままだ。「いずれ、法律は変わると思うが、男女格差解消の流れに水を差すような残念な判決になった」(原告男性)

●「夫に補償を残せない」ことは女性に対する差別なのではないか?

一方、原告代理人の成見暁子弁護士は、今回の判決は「夫は仕事、妻は家庭」という性的役割分担を肯定していると批判。さらに女性が遺族に不十分な補償しか残せないことが、女性の尊厳も傷つけていると主張する。

「夫は妻に遺族補償を残せるが、妻は残せない。それだったら夫が働こう、という選択にも影響を与える」(成見弁護士)

今回の合憲判決について、もう一人の代理人・松丸正弁護士は、裁判所が遺族年金を「損失補償」と捉えたか、「社会保障」と捉えたかが判断の分かれ目になったと分析している。前者では国の裁量権が制限されるのに対し、後者では著しく合理性を欠かない限り、違憲にはなりにくいためだ。

松丸弁護士は、「最高裁は現在の制度を認めてしまったが、立法府の中でもこの問題について考えてもらいたい」と、法改正などを求めていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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