14922.jpg
シリア渡航計画で旅券返納の杉本さん「渡航の自由勝ち取りたい」処分取り消し求め提訴
2015年07月30日 15時46分

シリアへの渡航を計画し、外務省にパスポート(旅券)の返納を命じられた新潟在住のフリーカメラマン杉本祐一さん(58)が7月30日、旅券返納命令処分などの取り消しを求めて東京地裁に提訴した。杉本さんは提訴後の会見で、「こうしたことを許すと、ジャーナリストの取材や渡航がいつ制限されるかわからないことになる。あってはならないことだ」と訴えた。

杉本さんは、今年2月、シリアへの渡航を計画していたところ、外務省から渡航の自粛を求められたが、応じなかったため、パスポートを返納させられた。外務省が、旅券法19条1項4号の「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」にあたると判断したためだった。4月の段階で、新しい旅券が発給されたが、シリアなど渡航できない国が明記された制限付きの旅券だった。

杉本さんは、「とにかく生きて帰ってくることが取材のポリシーだ。生きて帰ってくることで、はじめて戦地の人たちの生活、後方にいる難民の人々、避難生活をしている人々の現状を伝えることができる。わざわざ野蛮な人たちのもとに行って取材をしようとしたわけではない」と安全性に十分配慮した渡航計画だったことを強調した。

裁判では、旅券の返納命令と渡航制限が、憲法上認められた「海外渡航の自由」、「報道の自由・取材の自由」の制限にあたるとして、処分の違法性を争う方針だ。

代理人の中村亮弁護士は、憲法上の権利が制限されたこと以上に、今回の処分にいたる手続きについて、「強く疑問に思っている」と強調した。行政が国民の権利を制限する処分をした場合、弁明の機会や、聴聞の機会といった「申し開き」の機会が与えられる必要があるが、これが与えられていなかったというのだ。

中村弁護士は、「外務省が、(杉本さんに)渡航の自粛を求めてから、出発の日までは3週間以上あった。それなのに、杉本さんが、旅の安全に配慮しているといった点を説明する機会は与えられなかった」と外務省の対応を批判した。

杉本さんは、「僕は生きがいとしての海外取材を奪われ、仕事としての海外取材を奪われた。裁判を通じて、渡航の自由、表現の自由、報道の自由を勝ち取っていきたい」と裁判への意気込みを語っていた。

(弁護士ドットコムニュース)

シリアへの渡航を計画し、外務省にパスポート(旅券)の返納を命じられた新潟在住のフリーカメラマン杉本祐一さん(58)が7月30日、旅券返納命令処分などの取り消しを求めて東京地裁に提訴した。杉本さんは提訴後の会見で、「こうしたことを許すと、ジャーナリストの取材や渡航がいつ制限されるかわからないことになる。あってはならないことだ」と訴えた。

杉本さんは、今年2月、シリアへの渡航を計画していたところ、外務省から渡航の自粛を求められたが、応じなかったため、パスポートを返納させられた。外務省が、旅券法19条1項4号の「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」にあたると判断したためだった。4月の段階で、新しい旅券が発給されたが、シリアなど渡航できない国が明記された制限付きの旅券だった。

杉本さんは、「とにかく生きて帰ってくることが取材のポリシーだ。生きて帰ってくることで、はじめて戦地の人たちの生活、後方にいる難民の人々、避難生活をしている人々の現状を伝えることができる。わざわざ野蛮な人たちのもとに行って取材をしようとしたわけではない」と安全性に十分配慮した渡航計画だったことを強調した。

裁判では、旅券の返納命令と渡航制限が、憲法上認められた「海外渡航の自由」、「報道の自由・取材の自由」の制限にあたるとして、処分の違法性を争う方針だ。

代理人の中村亮弁護士は、憲法上の権利が制限されたこと以上に、今回の処分にいたる手続きについて、「強く疑問に思っている」と強調した。行政が国民の権利を制限する処分をした場合、弁明の機会や、聴聞の機会といった「申し開き」の機会が与えられる必要があるが、これが与えられていなかったというのだ。

中村弁護士は、「外務省が、(杉本さんに)渡航の自粛を求めてから、出発の日までは3週間以上あった。それなのに、杉本さんが、旅の安全に配慮しているといった点を説明する機会は与えられなかった」と外務省の対応を批判した。

杉本さんは、「僕は生きがいとしての海外取材を奪われ、仕事としての海外取材を奪われた。裁判を通じて、渡航の自由、表現の自由、報道の自由を勝ち取っていきたい」と裁判への意気込みを語っていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る