16558.jpg
「アホ」「辞めてしまえ」上司が部下に暴言を吐いても「口癖」ならば処分は軽くなる?
2014年10月06日 11時08分

兵庫県警は9月上旬、部下の警部に対して「アホ」や「辞めてしまえ」など、パワハラ発言を繰り返したとして、県警本部刑事部の警視(53)を「本部長注意」にしたと発表した。被害者の警部は体調を崩し、自宅療養中だという。

「本部長注意」は、いわゆる懲戒処分ではなく、比較的軽いものだ。共同通信によると、兵庫県警は「本人の口癖でもあることなど総合的に判断して、懲戒処分にしなかった」と発表している。

ただ、「アホ」や「辞めてしまえ」という発言は、相手の人格を否定するものだし、深く傷つけることはあるだろう。「口癖だったから」という理由で懲戒処分にしなかったのは、妥当な判断と言えるのだろうか。パワハラの問題にくわしい白川秀之弁護士に聞いた。

兵庫県警は9月上旬、部下の警部に対して「アホ」や「辞めてしまえ」など、パワハラ発言を繰り返したとして、県警本部刑事部の警視(53)を「本部長注意」にしたと発表した。被害者の警部は体調を崩し、自宅療養中だという。

「本部長注意」は、いわゆる懲戒処分ではなく、比較的軽いものだ。共同通信によると、兵庫県警は「本人の口癖でもあることなど総合的に判断して、懲戒処分にしなかった」と発表している。

ただ、「アホ」や「辞めてしまえ」という発言は、相手の人格を否定するものだし、深く傷つけることはあるだろう。「口癖だったから」という理由で懲戒処分にしなかったのは、妥当な判断と言えるのだろうか。パワハラの問題にくわしい白川秀之弁護士に聞いた。

●そもそも「パワハラ」とは?

「パワハラとは、職務上の地位などの優位性を利用して、社員に精神的・身体的ストレスを与えたり、職場環境を悪化させる行為のことです。

今回のように上司が部下に対して、『アホ』や『辞めてしまえ』という発言を繰り返すことは、れっきとしたパワハラです」

白川弁護士はこのように説明する。パワハラをした人に対しては法律上、どのような処分を下せるのだろうか。

「処分の内容は、パワハラの態様や程度、回数、被害者への損害の内容、過去の処分歴などによって変わってきます。

たとえば、過去にパワハラで処分を受けているのに、同じようなパワハラ繰り返した場合には、反省していないとしてさらに重い処分が下される可能性があります。

パワハラの内容があまりにもひどい場合は、懲戒処分を下すことも可能です」

●今回の処分は妥当なのか?

今回のケースでは、警視の発言は「本人の口癖」だったとして、懲戒処分よりもずっと軽い「本部長注意」とされた。その理由について、白川弁護士はこのように説明する。

「まず今回のパワハラは、上司と部下の関係といっても、警視と警部という一定の地位がある者同士の間で起こりました。

さらに、『本人の口癖』という認識が職場内にあったなら、周りの人にパワハラとして意識されていなかった可能性があります。そのために、軽い処分にとどまったのでしょう」

今回のような軽い処分は、果たして妥当だったのだろうか?

「個人的には、『懲戒処分』ではなく、『本部長注意』という処分が下されたのは『甘い』という気がします。少なくとも今回の件で、この警視が上司として不適格なことは明らかになったといえるので、降格等の処分を下すべきだったと思います。

それに、警視の発言が本当に『本人の口癖』なら、過去にも同じようなパワハラを繰り返すなど常習性があった可能性があります。本人にもパワハラをしている自覚はほぼないと思われるので、今後も警視の口癖で傷つく人が出るかもしれません。

加えて、報道によると、被害者の警部は体調を崩し、自宅療養中となっています。パワハラが体調不良の原因の一つという可能性もありますから、警視の口癖が被害者や職場に与えた影響は軽くはないでしょう。やはり、今回の処分は甘いと思います」

白川弁護士はこのように指摘していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る