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もし人類が「火星」に移住したら・・・宇宙ではどこの国の法律が適用されるのか?
2013年11月16日 14時20分

いつか人類は宇宙へと移住する日がくるのだろうか。宇宙飛行士の若田光一さんは11月7日、日本人として初めて国際宇宙ステーションの船長をつとめるため、宇宙に飛び立った。宇宙といえば、最近熱いのが「火星」だ。11月5日には、インドが火星探査機の打ち上げを行なった。

また、オランダのマーズワン財団は、10年後の火星移住を目指す計画で注目を集めている。移住プロジェクトへの参加者を公募したところ、140カ国以上から20万人を超える応募があったという。今後は応募者のなかから選抜された者が7年間に及ぶトレーニングを経て、2023年に火星に移住することを目標としている。

人類が火星で暮らすというのはSFの世界だけの話かと考えられていたが、科学技術の進歩で近い将来、現実のものになるのかもしれない。もし火星移住が実現した場合、火星ではどの国の法律が適用されるのだろうか。宇宙法にくわしい作花知志弁護士に聞いた。

いつか人類は宇宙へと移住する日がくるのだろうか。宇宙飛行士の若田光一さんは11月7日、日本人として初めて国際宇宙ステーションの船長をつとめるため、宇宙に飛び立った。宇宙といえば、最近熱いのが「火星」だ。11月5日には、インドが火星探査機の打ち上げを行なった。

また、オランダのマーズワン財団は、10年後の火星移住を目指す計画で注目を集めている。移住プロジェクトへの参加者を公募したところ、140カ国以上から20万人を超える応募があったという。今後は応募者のなかから選抜された者が7年間に及ぶトレーニングを経て、2023年に火星に移住することを目標としている。

人類が火星で暮らすというのはSFの世界だけの話かと考えられていたが、科学技術の進歩で近い将来、現実のものになるのかもしれない。もし火星移住が実現した場合、火星ではどの国の法律が適用されるのだろうか。宇宙法にくわしい作花知志弁護士に聞いた。

●事件が起きた物体の「登録国」によって左右される

作花弁護士は「火星への移住者がどこの国の法律で裁かれるかについては、はっきりしたことは言えません」と前置きしたうえで、次のように切り出した。

「たとえば、ある国に登録されたロケットの内部で発生した刑事事件は、その登録国に、裁判の管轄権があるとされています。これは1967年に発効した『宇宙条約』の第8条で決まっています」

つまり、日本に登録されたロケット内部で起きた事件なら、日本の裁判所が裁くということだ。

「一方、国際宇宙ステーションのように、複数の国が登録し、協力して宇宙に送る宇宙物体については、宇宙条約の規定では問題が解決しません。そこで、世界の15カ国により、特別な国際条約である『宇宙基地協定』が締結されました。

この協定では、宇宙基地内で起った刑事事件については、原則として事件の容疑者の国籍国が刑事裁判権を行使することになっています。

なお、他国民の生命や安全に影響を与えた場合などは、一定の条件下で、他国が刑事裁判権を行使することもあり得ます」

惑星上にある基地などにおいてはどうだろうか?

「『月協定』(日本は未加入)の12条は、《締約国は、月におけるその要員、宇宙機、装備、施設、基地および設備に対する管轄権および管理権を保持する》と定めています。この協定は太陽系の他の天体にも適用されます(1条)」

●人類移住なら火星に裁判所ができるかも?

「このような現在の宇宙諸条約の立場から、火星に移住する場合を考えてみますと、仮に一国のみに登録された宇宙物体で地球から火星への移住が行われるような場合には、その登録国の管轄権が及ぶことになるでしょう。

他方、火星への移住が複数の国の協力により行われる場合には、おそらくはその複数国により締結されるであろう特別な国際条約により、『宇宙基地協定』のような管轄権の調整の定めがされることになるのだと思います」

作花弁護士はこう述べたうえで、火星移住が実現した場合の裁判について、次のように予想していた。

「ただし、火星で発生した刑事事件に地球の国の刑事管轄権が及ぶといっても、刑事裁判のたびに移住者を地球に戻すのは、非現実的です。

その火星移住のための新しい国際条約において、火星自体に裁判所を設ける、という方向に向かうのではないでしょうか。まさに火星において、新しい人類社会が展開していくことになりますね」

(弁護士ドットコムニュース)

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