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死産した子をカバンに入れて過ごし、公園に埋めた女性に執行猶予 裁判長「適切に相談できる相手を」
2025年11月15日 10時24分
#死体遺棄

大阪市中心部にある公園で死産した女児の遺体を埋めたとして、死体遺棄の罪に問われた20代の女性被告人に対して、大阪地裁は11月5日、拘禁刑1年、執行猶予3年(求刑:拘禁刑1年)の判決を言い渡した。

検視によると、女児は妊娠約30週で死亡したとみられる。発見された遺体は腐敗や虫食いにより、腸や骨の一部が露出していたという。

なぜ死産した遺体は被告人の手元に残り、なぜ公園に埋められたのか。その経緯を追った。(裁判ライター・普通)

大阪市中心部にある公園で死産した女児の遺体を埋めたとして、死体遺棄の罪に問われた20代の女性被告人に対して、大阪地裁は11月5日、拘禁刑1年、執行猶予3年(求刑:拘禁刑1年)の判決を言い渡した。

検視によると、女児は妊娠約30週で死亡したとみられる。発見された遺体は腐敗や虫食いにより、腸や骨の一部が露出していたという。

なぜ死産した遺体は被告人の手元に残り、なぜ公園に埋められたのか。その経緯を追った。(裁判ライター・普通)

●通院せず続けた飲酒と喫煙

被告人は細身で、肩まで伸びた黒髪を下ろし、刑務官に挟まれて入廷した。

逮捕時には実名で大きく報じられたこともあり、傍聴席には多くの人が詰めかけた。配慮からか、年齢や住所など人定事項の確認は読み上げではなく、起訴状を示すにとどめられた。

検察官の冒頭陳述などによると、被告人は大学を中退後、会社員を経て、事件の1年ほど前から事件当時の勤務先に在籍し、2週に1度ほど母親の住む実家に帰省していた。それ以外の時間は勤務先の待機場所で寝泊りしていたという。

勤務先は公判中も「夜職」としか表現されなかった。被告人はその勤務先で避妊せず性交を繰り返し、やがて胎動を感じたが、妊娠を確認する通院はせず、喫煙や飲酒をやめなかった。

●「お墓チックで埋めるにはいい場所」

勤務先の待機所で破水し、その場で出産したが、子どもが産声を上げることはなかった。検視などによると、死因は妊娠30週ほどの常位胎盤早期剥離による窒息とみられる。遺体の肺には腐敗ガスがたまり、胎盤がついたままだった。

出産後、被告人は遺体を仕事用のカバンに入れ、一緒に寝たり、ホテルでの接客時にも持ち歩いていた。

被告人の供述調書によると、遺棄するきっかけは、友人との日帰り旅行だったという。以前、公園を訪れた際に木がたくさんあった記憶や、その雰囲気から「お墓チックで埋めるにはいい場所」と感じたという。

旅行前にコンビニで軍手を購入。現地で穴を掘り、遺体を埋めて、軍手とカバンは捨てた。

その3日後、公園で飼い犬を散歩させていた人が遺体を発見。報道で大きく取り上げられたことを受けて、被告人は勤務先の上司に打ち明けて、自首した。

取り調べでは「妊娠の現実を認められなかった、というのとはちょっと違う。自暴自棄というほうが正しい」「先のことをまったく考えられなかった」と供述している。

●「自分の身体に興味がない」

弁護側から証拠や証人の申請はなく、被告人質問に移った。被告人はどこかうつろな様子で、途切れ途切れに答えた。

もともと生理不順もあり、妊娠の確定的判断ができないまま、時が流れた。周囲に相談できる人もいなかったという。

当時の心境を「自暴自棄だった」「自分の身体に興味がない」と語り、勤務先で死産した記憶はあるが、それ以外について思い出せないと述べた。

母親とは、10代から20代にかけて互いに複雑な事情を抱えていたとし、コミュニケーションは取れていなかった。

事件当時も、定期的に実家に帰ることはあったものの、母親もその妊娠には気付かなかった。

現在は食事に出かけるなど、関係が回復しており、社会福祉士らの支援を受けて社会復帰の準備を進めているという。

弁護人:当時、誰かに相談できなかったのはどうしてですか。
被告人:もともと人に頼るのが好きでなく、当時は誰の顔も浮かびませんでした。

弁護人:では、それが改善して今後は相談していこうと思ったきっかけは?
被告人:自分の子の命が…。

徐々に声がかすれていき、聞き取ることはできなかった。

●「早く供養してあげなきゃと思って」

検察官の質問も続いた。犯行の悪質性を問い詰める口調に対して、被告人は言葉を詰まらせながら答えた。ただ、ゆっくりながらも当時を思い出しながら答えようとする様子が見受けられた。

検察官:犯行後、旅行には行ったんですか。
被告人:行っても、うわべだけの会話で、旅行中も何を喋ったとか覚えてなくて。予定が入ってたから行かないとって気持ちだけで。

検察官:遺体を埋めようと思ったのは?
被告人:遺体のままでなく、早く供養してあげなきゃと思って。思いついたのが土に埋めて、還してあげなきゃって。

防犯カメラの映像から、遺棄した時刻は午前9時台の約30分でおこなわれたとされている。穴を掘り、遺体に土をかぶせる際の心情については問われなかった。

検察官:遺体の写真を見ましたか。
被告人:いいえ。

検察官:虫に食べられ、腸や骨が出ていました。
被告人:それが土に還ってることと認識していた。自首して我に返って残酷なことをしたなと。

遺体は被告人の母親が引き取って葬った。母親が面会に訪れた際、被告人は「関係性がよくない時期が長く、これ以上迷惑をかけるより、会わない方がいいのでは」と断った。

しかし、母親が帰宅後、警察官からこれまでの関係性について謝罪していたと聞かされて、被告人も手紙のやりとりを始めた。

自首のきっかけについては、遺体が発見されたニュースを見て「申し訳ないことをした、早く話さなきゃ、誰かに話したかった、罪を償いたいと思った」と溢れるように言葉を続けた。

学生時代に学んだ語学を活かし、再び勉強したいという。検察官が、昼職での生活安定までの苦労や、「また夜職に戻るのか」といった心配をぶつけた。

「それはめっちゃ言われるけど」と強めに言葉を発した後、「これまで夢もなく真っ暗だったけど、今ではやりたいことや周りも温かいと気付かされ、戻りたい場所がある。普通になりたい」とはっきり答えた。

●裁判長「適切に相談する相手を見つけて」

判決は拘禁刑1年、執行猶予3年。

裁判所は、被告人の成育歴に問題があったとしても相応の判断能力を有していたと指摘し、遺体を敬うための措置を特に講じず、適切な手段をとらなかった点は「非難を免れない」とした。

最後に裁判長は「適切に相談する相手を見つけ、あなた自身が今後しっかり生きることを望む」と諭し、法廷を閉じた。

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