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リベンジポルノ、児童ポルノ、盗撮…「望まぬ画像」消去できる新制度6月スタート…過去には拒まれるケースも
2024年05月13日 09時57分
#盗撮 #児童ポルノ #リベンジポルノ #撮影罪

盗撮やリベンジポルノ、児童ポルノの画像(電磁的記録)が検察に押収された場合、行政手続きとして、消去や廃棄などの措置をとることが今年6月20日から可能になる。4月に閣議決定で施行日が決まった。

わいせつ事件にくわしい奥村徹弁護士によると、これまで、被害者が消去を求めても、加害者から拒まれるケースもあったという。

新制度「押収物に記録された性的な姿態等の画像の消去・廃棄」は、2023年7月に成立した性的姿態撮影等処罰法に基づくもの。いわゆる撮影罪(性的姿態等撮影罪)もこの法律で新設された。

被害者はこれまで、望まないかたちで撮影された自身の画像を「完全に消去できない」ケースもあったが、そのような不安が解消されるという。新しい制度で何が変わるのだろうか。奥村弁護士に聞いた。

盗撮やリベンジポルノ、児童ポルノの画像(電磁的記録)が検察に押収された場合、行政手続きとして、消去や廃棄などの措置をとることが今年6月20日から可能になる。4月に閣議決定で施行日が決まった。

わいせつ事件にくわしい奥村徹弁護士によると、これまで、被害者が消去を求めても、加害者から拒まれるケースもあったという。

新制度「押収物に記録された性的な姿態等の画像の消去・廃棄」は、2023年7月に成立した性的姿態撮影等処罰法に基づくもの。いわゆる撮影罪(性的姿態等撮影罪)もこの法律で新設された。

被害者はこれまで、望まないかたちで撮影された自身の画像を「完全に消去できない」ケースもあったが、そのような不安が解消されるという。新しい制度で何が変わるのだろうか。奥村弁護士に聞いた。

●「撮影罪」はできたけれど、残っていた課題は

——なぜ、これまでリベンジポルノや児童ポルノを没収できなかったのでしょうか

撮影罪や児童ポルノ罪などで撮影された画像は、起訴されて有罪になった場合には、判決で没収することができますが(刑法19条)、起訴されなかった場合には没収できません。

そのようなときには、被告人(被疑者)が任意に所有権を放棄しない限り、被告人に還付されることになります。

——刑法に基づく没収のほか、性的姿態撮影等処罰法に基づく「性的姿態等の画像などの複写物の没収」(8条)も2023年7月から始まっていました

刑法では犯罪組成物件(犯罪行為の不可欠な要素をなす物。偽造文書行使罪における偽造文書など)、犯罪供用物件(犯罪行為に不可欠な要素ではないが、行為のために提供あるいは使用したもの。殺人行為に使用した拳銃など)、犯罪生成物件(犯罪行為によって作り出されたもの。通過偽造罪における偽造通貨など)となる物そのものしか没収できないとされています。

この「性的姿態等の画像などの複写物の没収」は、没収の対象を「複製物」にまで広げるものです。

ただし、没収は有罪判決に伴う付加刑なので、その画像に関する罪につき有罪判決がないと没収もできません。また、不起訴の場合には没収ができません。

また、没収は、有体物としての媒体の所有権をまるごと国庫に帰属させる刑罰で、違法なデータだけを消去する事はできません。

そこで、行政処分として廃棄・消去する制度が検討されたのです。

今年6月から始まる「消去・廃棄」の制度は、〈検察官が、行政手続として、押収物が、性的姿態等撮影罪に当たる行為により生じた物等であって所定の違法画像にかかる電磁的記録を記録したものであるときは、その記録状況等に応じて、当該押収物に記録されている電磁的記録を消去し、又は当該押収物を廃棄する等の措置をとることができ、電磁的記録を記録したものでないときは、当該押収物を廃棄する措置をとることができる(10条)〉こととしたもので、起訴・不起訴を問わない措置となります。

消去・廃棄の対象は、性的姿態撮影罪・性的姿態等影像送信により生じた画像とその複製物、リベンジポルノ罪(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)の画像とその複製物、児童ポルノです(10条1項)。

さらに、従来は認められなかった電磁的記録上の画像の消去やリモートアクセス先の記録媒体の消去命令という方法も加えられています。

●捜査機関による取調べのほとんどが画像消去の説得に費やされることも

——これまで盗撮などの被害者が、対象となる画像を消去してほしいと考えても、求める法的根拠がなかったとも聞きます

電磁的記録の記録媒体が判決で没収されないときは、被告人に還付することになります。

最近の媒体は容量が大きいので、違法な画像だけでなく、日記、家族写真、会計帳簿など適法なデータも保存されていることが多くなり、所有権の放棄に応じない被告人もいます。

不起訴が確実になった性犯罪事件で、警察・検察の取り調べのほとんどが画像消去の説得に費やされることもあります。

画像タイトル mapo / PIXTA

没収される場合も、対象は有体物に限られており、当該媒体ごと没収するしかないので、没収予定の媒体から合法なデータを引き上げる方法を検察官と協議することもあります。

——被害者としては、起訴・不起訴に関係なく、望まないかたちで撮影された記録を消去することができるようになったということでしょうか

現行法でも偽造された電磁的記録の消去(刑訴法498条の2)に限って、電磁的記録の消去という没収方法が認められていましたが、リベンジポルノや児童ポルノの消去という没収はできませんでした。

それを、検察官による行政処分として、廃棄・消去という方法を導入するということです。撮影対象者に申立権があるわけではありません。

また、消去・廃棄の制度を取るための手続き保障として、対象電磁的記録ではない電磁的記録の複写の制度(18条)が設けられましたが、1個の媒体上に大量の性的画像が保存されている場合に、対象電磁的記録とそうでないデータとを選り分ける作業は大変だと思います。

——作業においては検察の負担が増すのでしょうか

たとえば、ネットでダウンロードしたわいせつ画像(所持は違法ではない)と、(違法な)リベンジポルノ・児童ポルノ・盗撮画像等が混在する大量な画像がある場合に、まず、対象者が申し出ると、検察官が目録を作成しますが(18条1項)、対象者も検察官も画像を1つずつ確認することになり、実際問題としては手間がかかるでしょう。

(参考文献) 電子媒体上の「他人の」電磁的記録の没収について--東京高裁平成15.6.4の事例を基に (特集 サイバー刑事法の動向と課題) 刑法雑誌45(1) 2005.7 p.151~159 奥村徹

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案【逐条説明】令和五年二月法務省

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