5764.jpg
「セクハラ禁止規定をつくって」 ハラスメント法整備にらみ弁護士ら訴え
2018年11月09日 11時59分

厚生労働省の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会で、ハラスメント防止対策について議論される中、セクハラ法整備を考える院内集会(主催・メディアで働く女性ネットワーク)が11月6日、東京・永田町の衆議院第1議員会館内で開かれた。

女性記者や弁護士、大学教授らがどのような形の法整備が望ましいか議論し、集まった170人に「セクハラの禁止規定を求める声を高めることが大事」と呼びかけた。

厚生労働省の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会で、ハラスメント防止対策について議論される中、セクハラ法整備を考える院内集会(主催・メディアで働く女性ネットワーク)が11月6日、東京・永田町の衆議院第1議員会館内で開かれた。

女性記者や弁護士、大学教授らがどのような形の法整備が望ましいか議論し、集まった170人に「セクハラの禁止規定を求める声を高めることが大事」と呼びかけた。

●紛争解決援助制度の問題点

現在、セクハラ被害者を救済するシステムは主に、民事裁判など司法によるものか、行政による紛争解決援助制度の二種類だ。院内集会では、独立行政法人労働政策研究・研修機構の副主任研究員・内藤忍さんが、この紛争解決援助制度の課題を指摘した。

内藤さんによると、2017年度に都道府県労働局に寄せられたセクハラに関する相談は6808件にのぼった。しかし、同年度の「紛争解決の援助」と「調停」申し立て受理件数はわずか計135件だった。

裁判を起こすには心理的にも経済的にもハードルが高い。それに代わる手段としてあるはずの制度なのに、なぜ利用率が低いのかーー。内藤さんが調査を行ったところ、利用者からは「自分は何も悪いことをしていないのに、どうして譲歩しなければならないのか」「謝罪や反省が欲しかった」といった声が上がったという。

内藤さんはこうした声について、主に行政による救済が「相互の譲り合い」を前提とするもので、男女雇用機会均等法にはセクハラ行為そのものに対する禁止規定がないために「事業主がセクハラ防止措置義務を守っているかどうか」しか判断できないためだと指摘。「禁止規定と迅速に救済が得られるシステムを作ることが必要」と訴えた。

●セクハラ禁止規定「法律に明記して」

ハラスメント問題に詳しい圷由美子弁護士は、育児・介護休業法で「育児をしている状態を理由とする嫌がらせ」がマタハラ防止措置の対象になっていないことを問題視した。

圷弁護士の元には、フルタイム勤務の女性が労働局にマタハラの相談をしたところ「育児休業や時短制度を利用していないため、育介法の対象ではないと言われた」といった相談があったという。

圷弁護士は「担当したマタハラ裁判で『会社の不誠実な対応はいずれも幼年の子を養育していることを原因とするもの』と認められた判決もある。育児そのものを理由とするハラスメントを禁止することが必要」と話した。

国連の国際労働機関(ILO)は今年6月、職場のセクハラを防止するための条約を制定する方針を決めたと報じられている。メディアで働く女性ネットワーク・代表世話人で、元朝日新聞記者の林美子さんは、「セクハラをしてはならないという禁止規定を法律に明記しないと、目の前にあるセクハラは止められない。こうした規定を求める声を高めていくことが大事」と呼びかけた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る