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企業勤務だけど職場は農園…批判集めた「障害者雇用代行ビジネス」の現在地 業界の取り組み進む
2023年10月12日 10時12分

障害者雇用が増加の一途をたどっている。2022年の法改正で、2026年までに法定雇用率が、現状の2.3%から2.7%に引き上げられることが決まり、働く場の受け皿が課題となっている。

雇用率を上げるため、本業と関連性の薄い農園などで雇う形態に注目が集まったのは2022年末。国会で「代行ビジネス」などと批判されたことを受け、厚生労働省が実態調査した。3月末時点で就業場所の最多は「農園」91カ所。利用企業は延べ1000社以上と、この雇用形態が広がっている実情が明らかになった。

新たな形態を一律に批判しても、雇用率増加は見込めない。厚労省はこうしたビジネスを担う業者のメリットにも言及し、事実上「容認」のスタイルを取った。業界側も、より健全な発展とサービス向上を目的に、6社が10月に団体をつくった。

ビジネスの仕組み

障害者雇用が増加の一途をたどっている。2022年の法改正で、2026年までに法定雇用率が、現状の2.3%から2.7%に引き上げられることが決まり、働く場の受け皿が課題となっている。

雇用率を上げるため、本業と関連性の薄い農園などで雇う形態に注目が集まったのは2022年末。国会で「代行ビジネス」などと批判されたことを受け、厚生労働省が実態調査した。3月末時点で就業場所の最多は「農園」91カ所。利用企業は延べ1000社以上と、この雇用形態が広がっている実情が明らかになった。

新たな形態を一律に批判しても、雇用率増加は見込めない。厚労省はこうしたビジネスを担う業者のメリットにも言及し、事実上「容認」のスタイルを取った。業界側も、より健全な発展とサービス向上を目的に、6社が10月に団体をつくった。

ビジネスの仕組み

●「代行ビジネス」で働く障害者は既に6500人超え

厚労省は4月に発表した実態調査で、いわゆる「障害者雇用ビジネス」を行っているのは23法人、就業障害者は6568人に上ると発表した。「雇用率増加が目的化する」などと懸念を示す一方で、「障害者の特性を踏まえた業務選定、マッチングを通じて戦力化するノウハウがある」とメリットにも言及。趣旨に反しないようガイドラインを策定した。

業界団体「一般社団法人日本障害者雇用促進事業者協会」6社のシェアは40%ほど。理事長を務めるスタートラインの西村賢治社長は記者会見で「賛否は認知している。雇用率ありきでは、と疑念を抱かれる例もあった。だからこそ集まって業界全体を正しくしていき、理解してもらう必要がある」と強調した。厚労省のガイドラインに沿って自主点検するほか、さらに多くの同業者に加入を呼びかけていくという。

同社は2009年から自宅に近い場所で働くサテライトオフィス事業を展開。現在は、ハーブティーを作る農園IBUKIなどを運営する。大手住宅メーカーや法律事務所もこの農園を活用している。同社には、約10年前から障害者の特性を心理面から研究・分析するCBSヒューマンサポート研究所(旧障害者雇用研究室)がある。定期的な面談を通した科学的根拠に基づく支援のもとで、ミスマッチをなくし定着を促す目的という。

画像タイトル 障害者雇用支援ビジネスに携わる6社が業界団体結成について行った記者会見(2023年9月、弁護士ドットコム撮影)

●重度の障害者が雇用の現場に来る時代

所長を務める小倉玄氏は、医学博士で公認心理師だ。障害のある長女が生まれたことを機に、この世界に入った。障害者雇用はこれまで身体、知的、精神と広がってきた。今後は、今まで働いていなかった重度の障害者も対象となることが予測される。

「(作業所などの)福祉的就労から(企業で働く)一般就労に移行する方が増え、企業側はより多様な障害への対応が求められます」

そのためには、精神障害、発達障害や高次脳機能障害など「見えない障害」を「見える化」することが不可欠だという。受け入れる側は、その特性を理解し、補完する手段を一緒に考えなければ、マネジメントはできない。

特に、一人一人の障害者について、アセスメントに基づいた多面的な理解をすることが重要だと小倉氏は説明する。同社では独自に開発したアセスメントシートやスキルを把握するための模擬業務などを活用するという。その上で、雇用主である企業側と共に、必要な配慮や補完する手段などを決めてから実務に入っている。

「できていないところではなく、できているところに注目をして、プラスのフィードバックを行う事が定着には重要なキーポイントとなります」

同社のアンケートでも仕事に対するフィードバックの有無によって、会社の役に立っていると思うかどうか意見が分かれていることが分かっている。

例えば、同社の運営する焙煎所ではコーヒー豆の欠点豆を覚えて取り除く選別作業がある。繰り返しやっていく中で「できたね」と評価される。こうしたプラスのフィードバックは「適切な行動」を増やし、それを維持することにつながるという。

画像タイトル 関東地方にある屋内農園施設。ここに入居する各社の社員である障害者らが通ってくる(2022年、弁護士ドットコム撮影)

●受け入れ企業の対応策は

一方、壁をたたいて出ていってしまう、仕事を途中で放棄してしまうなど「不適切な行動」があった場合、どうすればよいのか。

「本人の障害や性格のせいにするのは簡単ですが、根本的な解決にはなりません。環境との相互作用と考えるべきです。その行動の前後には何があったのか、助長するような言動などがなかったか分析が必要です」

これまで障害者の受け入れのノウハウがない企業が、そこまでするのは困難とも言える。そのためにも、同社のような障害者雇用を促進する専門の業界を活用してほしいと小倉氏は訴える。

画像タイトル 一人一人のアセスメントが、雇用定着には重要だと訴える医学博士の小倉研究所長(2023年、弁護士ドットコム撮影)

障害者基本法では障害者とは「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と定義づけられている。

「障害をオープンにして就労するということは、障壁を抱えながらも理解を得ながら働きたいという表れです。障害に限らず、それぞれの特性の強さはあるもの。相手を理解して自立を促すことができる職場は、誰にとっても働きやすいところになります」(小倉氏)

西村社長は「障害者雇用支援ビジネスを利用する企業に対しても、障害者雇用促進法の趣旨を啓発する責務がある」とし、業界全体の発展の流れをつくっていく決意を述べていた。

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