6505.jpg
「見知らぬ男に触れられるくらいなら・・・」 溺れる娘の救助を妨害した父親の罪は?
2015年08月24日 11時52分

「見知らぬ男に触られるくらいなら、娘を死なせてあげてくれ」。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、海で溺れた女性の父親が「娘の名誉を守るため」に救助活動を妨害したとして、逮捕された。UAEのニュースサイト「エミレーツ 24|7」が8月上旬、ドバイ警察の捜索・救助部門のアーメド氏の「忘れられない事件」として紹介した。

記事によると、数年前、ドバイのビーチに家族と遊びに来ていた女性(20)が突然、海で溺れる事故が起きた。救助隊員の男性が助けに向かおうとしたところ、女性の父親が「見知らぬ男に触れられるくらいなら、娘を死なせてあげてくれ」と立ちはだかった。

不幸なことに、女性はそのまま溺れて亡くなった。その後、父親は救助活動を妨害したとして、逮捕・起訴されたという。日本ではあまり考えにくい事件かもしれないが、もし同じようなことが起きた場合、父親はどのような罪に問われるのだろうか。松原祥文弁護士に聞いた。

「見知らぬ男に触られるくらいなら、娘を死なせてあげてくれ」。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、海で溺れた女性の父親が「娘の名誉を守るため」に救助活動を妨害したとして、逮捕された。UAEのニュースサイト「エミレーツ 24|7」が8月上旬、ドバイ警察の捜索・救助部門のアーメド氏の「忘れられない事件」として紹介した。

記事によると、数年前、ドバイのビーチに家族と遊びに来ていた女性(20)が突然、海で溺れる事故が起きた。救助隊員の男性が助けに向かおうとしたところ、女性の父親が「見知らぬ男に触れられるくらいなら、娘を死なせてあげてくれ」と立ちはだかった。

不幸なことに、女性はそのまま溺れて亡くなった。その後、父親は救助活動を妨害したとして、逮捕・起訴されたという。日本ではあまり考えにくい事件かもしれないが、もし同じようなことが起きた場合、父親はどのような罪に問われるのだろうか。松原祥文弁護士に聞いた。

●子どもが未成年だったら「殺人罪」が成立する可能性も

「救助隊員が父親から妨害されて、溺れている子どもを助けることができないというケースは、日本では通常、考えられません。あまり現実的な事件ではありませんね」

松原弁護士はこう切り出した。仮に、父親の妨害によって、救助隊員が助けられず、子どもが溺死したらどうなるのだろうか。

「父親には『殺人罪』の成否が問題となります(刑法199条)。

子どもが未成年者であれば、父親には、親権者として子どもを助ける法的義務があります(民法820条)。さまざまな事情を考慮に入れて、父親の妨害が殺人行為と評価できれば、殺人罪にあたるでしょう。

一方、子どもが成人の場合、父親には子どもを助ける法的義務はありません。特に、子どもを助ける義務を生じさせる事情がなければ、殺人罪にあたらないと思います」

ほかの罪には問われないのだろうか。

「父親には『保護責任者遺棄罪』(刑法218条)の成否も問題になります。

しかし、保護責任者遺棄罪の行為対象が、『老年者、幼年者、身体障害者または病人』とされているので、溺れている人はいずれにもあたりません。したがって、保護責任者遺棄罪が成立しません。

なお、救助隊員が公務員であれば、公務執行妨害罪(刑法95条)にあたるでしょう」

今回のケースでは、父親が娘の名誉を「思いやって」のことのようだが、そのような事情で刑が軽くなることはあるのだろうか。

「『娘さんの身体を見知らぬ男に触られたくない』と考えた事情に酌むべきものがあれば、執行猶予がついたり、刑が軽くなる『情状酌量』の余地はあると思います。しかし、現実的には難しいのではないでしょうか」


松原弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る