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衣類用スプレーで「中毒症状」 メーカーに治療費を請求できる?
2013年04月19日 14時44分

国民生活センターによると、昨年8月、40代の女性が「紫外線カット」をうたった衣類用のコーティングスプレーを、屋内でバスタオルに使用した際、缶の半分程度使用したところで、肺障害を発症し、入院するという事故が起きたという。

この商品には、呼吸器系の中毒事故を引き起こす可能性のあるシリコン樹脂が使われていたという。シリコン樹脂やフッ素樹脂は一般的な防水スプレーにも配合されており、注意表示が目立つように記載されている。一方で、女性が使ったスプレーには目立つ表示がなかったために、消費者が見逃して使用するおそれがあった。

国民生活センターは、使用前に成分を確認したり、乳幼児には使わないように注意を呼びかけている。では、このようなスプレーを使って、「中毒症状」になったとしたら、消費者はメーカー側に対して治療費を請求することができるのだろうか。尾崎博彦弁護士に聞いた。

●危険性に応じて、製品には注意表示することが求められている

「スプレー缶の成分が人体に悪い影響を及ぼすからといって、直ちに欠陥が認められるわけではありません。およそ製品の欠陥は、消費者が通常の用法に従って使用したにもかかわらず、傷害などの結果が生じたと言う場合に認められるからです」

まず、尾崎弁護士はこのように指摘する。たしかに人体に悪いからといって「欠陥だ」とするわけにはいかないだろう。

「問題は、『通常の用法に従った』使用だったと言えるかです。言い換えると、『製品の目的や性格からして、普通の消費者がそのような使い方をしても不思議はない』というものと考えることができます」

尾崎弁護士によると、「危険を伴う製品の場合、使用方法の説明や注意書きについて、いかなる表示がなされていたのか、が密接な関係を持つことになる」という。

「このような説明や注意書きは、製品の危険性の程度に応じて表示することが求められます。過去に事故例もあり、危険性が周知されているような製品については、その表示は大きく、わかりやすくなされていなければならないでしょう」

吸い込むと中毒症状を起こすおそれのある成分が配合された「スプレー」などに、目立つ注意表示がされているのは、こういった理由があるということだ。

●「表示が不十分だったメーカー側は損害賠償義務を免れない」

では、女性が使った「衣類用スプレー」の場合はどうだろうか。こちらにも呼吸器系の中毒事故を引き起こす成分が入っていたのに、注意書きは目立つように表示されていなかったということだが・・・。

「かつて、防水用のスプレーについては、その成分を吸い込んだことによる事故が複数報告されていたようです。そうすると、今回の衣類用スプレーの成分が防水スプレーと類似しているのであれば、同様の表示は必要であったと考えられますので、その表示が不十分だったメーカー側に損害賠償義務は免れないように思われます」

このように説明したうえで、尾崎弁護士は次のように付け加える。

「もっとも、スプレー缶は風通しのよくないところで使用するのは避けるべきというのも、比較的知られた知識ではないかとも思えます。報道内容からは分かりませんが、密閉された空間で大量に使用していたような場合、消費者にも過失があるとして、損害賠償が減額されるかも知れません」

日常的に利用する製品にも、多かれ少なかれ有害な成分は含まれているものだ。いずれにせよ、消費者としては、注意書きを正しく読んで、それに応じた使い方をしたほうがよいということだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

国民生活センターによると、昨年8月、40代の女性が「紫外線カット」をうたった衣類用のコーティングスプレーを、屋内でバスタオルに使用した際、缶の半分程度使用したところで、肺障害を発症し、入院するという事故が起きたという。

この商品には、呼吸器系の中毒事故を引き起こす可能性のあるシリコン樹脂が使われていたという。シリコン樹脂やフッ素樹脂は一般的な防水スプレーにも配合されており、注意表示が目立つように記載されている。一方で、女性が使ったスプレーには目立つ表示がなかったために、消費者が見逃して使用するおそれがあった。

国民生活センターは、使用前に成分を確認したり、乳幼児には使わないように注意を呼びかけている。では、このようなスプレーを使って、「中毒症状」になったとしたら、消費者はメーカー側に対して治療費を請求することができるのだろうか。尾崎博彦弁護士に聞いた。

●危険性に応じて、製品には注意表示することが求められている

「スプレー缶の成分が人体に悪い影響を及ぼすからといって、直ちに欠陥が認められるわけではありません。およそ製品の欠陥は、消費者が通常の用法に従って使用したにもかかわらず、傷害などの結果が生じたと言う場合に認められるからです」

まず、尾崎弁護士はこのように指摘する。たしかに人体に悪いからといって「欠陥だ」とするわけにはいかないだろう。

「問題は、『通常の用法に従った』使用だったと言えるかです。言い換えると、『製品の目的や性格からして、普通の消費者がそのような使い方をしても不思議はない』というものと考えることができます」

尾崎弁護士によると、「危険を伴う製品の場合、使用方法の説明や注意書きについて、いかなる表示がなされていたのか、が密接な関係を持つことになる」という。

「このような説明や注意書きは、製品の危険性の程度に応じて表示することが求められます。過去に事故例もあり、危険性が周知されているような製品については、その表示は大きく、わかりやすくなされていなければならないでしょう」

吸い込むと中毒症状を起こすおそれのある成分が配合された「スプレー」などに、目立つ注意表示がされているのは、こういった理由があるということだ。

●「表示が不十分だったメーカー側は損害賠償義務を免れない」

では、女性が使った「衣類用スプレー」の場合はどうだろうか。こちらにも呼吸器系の中毒事故を引き起こす成分が入っていたのに、注意書きは目立つように表示されていなかったということだが・・・。

「かつて、防水用のスプレーについては、その成分を吸い込んだことによる事故が複数報告されていたようです。そうすると、今回の衣類用スプレーの成分が防水スプレーと類似しているのであれば、同様の表示は必要であったと考えられますので、その表示が不十分だったメーカー側に損害賠償義務は免れないように思われます」

このように説明したうえで、尾崎弁護士は次のように付け加える。

「もっとも、スプレー缶は風通しのよくないところで使用するのは避けるべきというのも、比較的知られた知識ではないかとも思えます。報道内容からは分かりませんが、密閉された空間で大量に使用していたような場合、消費者にも過失があるとして、損害賠償が減額されるかも知れません」

日常的に利用する製品にも、多かれ少なかれ有害な成分は含まれているものだ。いずれにせよ、消費者としては、注意書きを正しく読んで、それに応じた使い方をしたほうがよいということだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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