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コインハイブ事件、最高裁で無罪に 男性「心底安堵しています」戦い振り返る
2022年01月20日 18時20分

自身のウェブサイト上に他人のパソコンのCPUを使って仮想通貨をマイニングする「Coinhive(コインハイブ)」を保管したなどとして、不正指令電磁的記録保管の罪(通称ウイルス罪)に問われたウェブデザイナーの諸井聖也さん(34)の上告審判決が1月20日、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)であった。

山口裁判長は罰金10万円の支払いを命じた2審・東京高裁判決を破棄し、無罪判決を言い渡した。裁判官5人全員一致の意見。

諸井さんは「無罪という結果で終われて本当に嬉しいですし、日本のインターネットに対して汚点のような判例を残さずに済んだ事に心底安堵しています。弁護団の先生をはじめ、たくさんの方に応援していただいて、得られた結果だと思う。ありがとうございました」と感謝を述べた。

主任弁護人の平野敬弁護士は「日本のインターネットのみならず、技術開発全般に大きなインパクトを与える事件だと考えてずっと戦ってきました。最高裁で戦い無罪判決を得られたことに、深い感慨と安堵を感じています」と支援に感謝した。

画像タイトル 無罪の旗をもつ諸井さん(左)と主任弁護人の平野敬弁護士

自身のウェブサイト上に他人のパソコンのCPUを使って仮想通貨をマイニングする「Coinhive(コインハイブ)」を保管したなどとして、不正指令電磁的記録保管の罪(通称ウイルス罪)に問われたウェブデザイナーの諸井聖也さん(34)の上告審判決が1月20日、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)であった。

山口裁判長は罰金10万円の支払いを命じた2審・東京高裁判決を破棄し、無罪判決を言い渡した。裁判官5人全員一致の意見。

諸井さんは「無罪という結果で終われて本当に嬉しいですし、日本のインターネットに対して汚点のような判例を残さずに済んだ事に心底安堵しています。弁護団の先生をはじめ、たくさんの方に応援していただいて、得られた結果だと思う。ありがとうございました」と感謝を述べた。

主任弁護人の平野敬弁護士は「日本のインターネットのみならず、技術開発全般に大きなインパクトを与える事件だと考えてずっと戦ってきました。最高裁で戦い無罪判決を得られたことに、深い感慨と安堵を感じています」と支援に感謝した。

画像タイトル 無罪の旗をもつ諸井さん(左)と主任弁護人の平野敬弁護士

●「日本全体の技術者の戦い」

「コインハイブというプログラムそれ自体は好き嫌いがあると思いますし、人によっては嫌だと思うかもしれない。それがただちに刑罰に処するにふさわしいものなのか、ずっと疑問を感じてきました。

もしこれを許せば、今後の日本の技術開発やプログラム開発は萎縮してしまって、諸外国にますます置いていかれることになってしまう。諸井さんの戦いは、諸井さん本人の戦いのみならず、日本の技術者全体の戦いであると考えています」。

無罪判決を受け、平野弁護士はコインハイブ事件をこう振り返った。

画像タイトル 諸井さん(左)と主任弁護人の平野敬弁護士

コインハイブの一斉摘発が明るみに出たのは、2018年6月だった。その頃、コインハイブ以外にも不正指令電磁的記録に関する罪での取り締まりが相次いで報道された。

2018年3月、情報セキュリティーに関するウェブマガジン「Wizard Bible」を運営していた男性が、遠隔操作によって外部からコマンドを実行できる簡単なサンプルコードを公開していたことで、不正指令電磁的記録提供の罪で略式起訴され、罰金50万円の略式命令を受けた事件があった(Wizard Bible事件)。

2019年3月にも、インターネット掲示板に無限にアラートが出るページへのURLを書き込んだとして、兵庫県警が不正指令電磁的記録供用未遂の疑いで、13歳の女子中学生と男性2人の自宅を家宅捜索。書類送検された男性2人は2019年5月、不起訴処分(起訴猶予)となった(アラートループ事件)。

今回の最高裁判決を受け、捜査現場への影響はあるのか。平野弁護士は「最高裁で具体的な解釈論が示されたことで、警察が濫用的に取り締まりを行うことは減っていくだろう」と期待した。

●弁護人「正しい判断が示された」

第一小法廷は「プログラムコードの動作を一般の使用者が認識するべきとは言えない」とし、1審・2審と同様に反意図性を認めた。

一方で、不正性については「CPUや消費電力は閲覧者がその変化に気づくものではなかった」、「ウェブサイトの運営者が閲覧を通じて利益を得る仕組みは重要」、「プログラムコードの動作の内容であるマイニング自体は仮想通貨の信頼性を確保するための仕組み」と指摘し、今回のプログラムコードは「社会的に許容し得ないものとはいえず、不正性は認められない」と無罪を言い渡した。

判決について、平野弁護士は「1審よりもかなり進歩している部分がある」と評価した。

「1審・2審とも、枠組みとしてはまず反意図性の要件について検討し、反意図性が認められれば原則として不正性が認められるという書き振りをしていたが、最高裁はそのロジックを採用せず、反意図性と不正性をそれぞれ独立して検討するやり方をした。そこは大きな進歩であり、正しい判断が示されたものと考えている」

また、最高裁が破棄差し戻し(過去に審理した裁判所で裁判のやり直しをさせること)とせず、破棄自判(最高裁自ら原判決に代わる判決をする)したことについて、「第一小法廷の山口厚裁判長は、不正指令電磁的記録保管の罪の立法に大きく関わってこられた。今回破棄自判したことは、最高裁としての責任を大きく果たしたものだ」と話した。

●判決文全文

判決文全文は、最高裁HPに掲載されている。 <https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/869/090869_hanrei.pdf>

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