8480.jpg
固定資産税のかからない「キャンピングカー生活」本当に節税になるのか、税理士が検証
2016年08月01日 10時09分

「キャンピングカーがあれば、車を停めたその場所が家なのです」「毎日同じ場所に帰るなんて非効率すぎる」。大学卒業後に始めた、キャンピングカーでの生活をつづった男性ブロガーの記事がネット上で話題になった。

気ままに移動しながら暮らすことができるのが利点だが、ネット上では、普通車よりも税金が安いことや、住宅と違い、固定資産税がかからないという税金のメリットを指摘する意見もあった。

住所が定まらないキャンピングカー生活だと、本当に税金が安くなるのだろうか。佐原三枝子税理士に聞いた。

「キャンピングカーがあれば、車を停めたその場所が家なのです」「毎日同じ場所に帰るなんて非効率すぎる」。大学卒業後に始めた、キャンピングカーでの生活をつづった男性ブロガーの記事がネット上で話題になった。

気ままに移動しながら暮らすことができるのが利点だが、ネット上では、普通車よりも税金が安いことや、住宅と違い、固定資産税がかからないという税金のメリットを指摘する意見もあった。

住所が定まらないキャンピングカー生活だと、本当に税金が安くなるのだろうか。佐原三枝子税理士に聞いた。

●「家にかかる固定資産税からは解放されます」

「まず、キャンピングカーも車ですから、自動車関連の税金がかかります。

キャンピングカーは8ナンバーという警察車両や消防車と同じ特殊車両に区分されます。そのため、自動車税は同じ排気量の3ナンバーの普通自動車より若干安くなります。

取得時にかかる自動車取得税は変わりませんが、購入時や車検時に支払う自動車重量税も自動車税同様安く設定されています。ただ、8ナンバー車は新車時の車検が2年目にあるので、3ナンバーより1年車検が短くなります。

キャンピングカーに改造されることの多いハイエース(排気量2700L)で比べると、税金や車検などの法定費用6年間分で普通車との差は13万円くらいと言われており、8ナンバーが節税になるというほどのメリットは感じられません。

しかし、キャンピングカーで生活することで、家にかかる固定資産税からは解放されます。たとえ寝泊りできても、キャンピングカーはあくまで車両なので、固定資産税はかかりません。都市部に家を持つより自動車関連の税金のほうが安いと思われますので、この点は節税になるでしょう」

では、住民税はどうだろうか。

「まず、住民税の課税の仕組みを説明しましょう。個人の所得には、国税である所得税と地方税である住民税(県、市民税)がかかります。

サラリーマンの方なら、毎月のお給料から、その毎月のお給料に対応する所得税を概算で徴収されます。年末に1年間の収入と扶養家族、社会保険料などの控除、徴収された所得税を集計して再計算し、還付もしくは徴収して税金を清算します。これを年末調整といいますが、年末調整は所得税だけの制度です。

一方、住民税はこのようにリアルタイムで計算されません。住民税は、勤務先の会社から住所地の市町村に年末調整のデータが送られ、市町村がそれに従って住民税を計算します。その結果は、翌年の5月に勤務先の会社に通知され、6月のお給料から12回に分けて徴収されます。途中で退職すれば、その後の税金は自分で納めます。

このように、住民税の徴収は常に前年のものになります。住民税はどこの市町村が徴収するかというと、1月1日に住所地があったところになります」

では、1月1日の時点で、すでにキャンピングカーで旅に出ていた場合はどうなるのか。

「住所地は住民基本台帳に記載された住所を使用します。転出届を出したにもかかわらず、転出先の市町村に住民票を移動しなかった場合には、転出元の市町村に住民登録が戻ってしまいます。つまり、住民登録の登録期間に空白を作ることはできないのです。

ですから、前年に課税所得がある方なら、年末までに死亡、もしくは海外へ転出していなければ、翌年の住民税の徴収から逃れることはできません。

キャンパーの中には有名なブロガーの方もいてアフェリエイト収入などを得て、個人事業主として確定申告しています。移動が多いので、実家などの住所で住民登録をして申告しておられるようです」

佐原税理士は最後にこう釘を刺す。

「転出元の住所に住民登録が戻ったところで、そこには何もないから市役所からの通知が届いても逃げ切れる、という猛者がいるかもしれませんが、健康保険や免許の更新、選挙の通知など日常生活に支障が出ることが考えられますし、住所不定になることで失う社会的信用は計り知れません。

キャンピングカー生活と住民税から逃れることは別物です。新しいライフスタイルとなりそうなキャンピングカー生活を根付かせるためにも、税金に対する正しい理解をお願いしたいと思います」


【取材協力税理士】

佐原 三枝子(さはら・みえこ)税理士・M&Aシニアスペシャリスト

兵庫県宝塚市で開業中。工学部やメーカー研究所勤務から会計の世界へ転向した異色の経歴を持つ。「中小企業の成長を一貫してサポートする」ことを事務所理念とし、税務にとどまらず、経営改善支援、事業承継や海外事業展開の支援を手掛けている。

事務所名 : 佐原税理士事務所

事務所URL:http://www.office-sahara1.jp/

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る